喪失というものにかたちがあるとしたら/ホロウ・シカエルボク
 
きなさいと言われた気がした、俺は外に出て建物を見上げた、どうしていいかわからなかったので一礼した、二階の窓で誰かが手を振ったような気がした、病院を後にして小さな街の中を歩いた、そこにもやっぱり人の気配がなかった、まるで見覚えのない景色だった、なんなんだ、と俺は呟いた、すべてが夢の中のことのように思えた、俺はいま本当に生きているのだろうか、ここは現実の世界なのだろうか?それを知るにはここを出て駅にでも向かうしかなかった。


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