喪失というものにかたちがあるとしたら/ホロウ・シカエルボク
 
段を半ばウキウキしながら登り始めた、いや、そのはずだった、目を覚ますと見知らぬベッドの上に居た、死んでいなかった、と思った、どこのかはわからないけれど、そこが病院であることはひと目でわかった、それも、多分に前時代的な、70年代といっても差し支えないようなセットであることは間違いなかった、ドラマのようだ、と俺は考えた、このあとどうなる?ドラマならいかにもな医者が看護師を従えて現れる、俺は少し待ってみた、いま起きたかのように唸り声を出したりもした、でも誰もやってこなかった、身体を動かそうとしたが動かなかった、縛られているのだろうか?目玉だけを動かして身体を眺めてみたが、そういうわけではなさそうだった、
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