喪失というものにかたちがあるとしたら/ホロウ・シカエルボク
零れ出た、それは海辺の洞窟のような臭いがした、カサカサ、カサカサとフナムシたちが俺の周りをうろつくのが聞こえた、いや、これは幻聴だ、ここは陸地だ、海なんかずっと遠くにあったはずだよ、カラスの羽音と鳴声が随分近くなっている、待ちきれなくなっている連中がもう少し近くで確かめようとしているんだろう、身体が冷えてきているのがわかった、もうそれは生を渇望するような状態ではなかった、これが死というやつか、と俺は感じ、もはやそれを受け入れるしかないことはわかっていた、俺の身体でこのカラスどもの腹が膨れるのなら、満更無駄な人生でもなかったのだろう、俺は目を閉じた、背後で爆竹が鳴るような音が聞こえ、俺は死への階段を
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