大雑把なルーレットの上の夜/ホロウ・シカエルボク
 
けて寝床に戻ろうとした、寝室で俺はベッドを見つめて茫然とした、そこに誰かが眠っていた形跡はなかった、俺が朝そこを離れた時と同じ状態で沈黙していた、眠っていたのではなかった、俺はひとつの仮定的な現実を喪失した、ずっとキッチンに居たのかもしれない、深く考えるべきではなかった、俺は今眠ろうとしているのだから…縫い針に差し込まれる糸のようにブランケットの中に滑り込むと、仰向けになって静かに目を閉じた、現実には何もない、それが本当なのだ、現実というのは、いつだってそれを感じられる瞬間にしか存在していないわけだから―日常とか習慣とかを現実のように語る人間は多いけれど、それはただの日常や習慣に過ぎない、目に見え
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