大雑把なルーレットの上の夜/ホロウ・シカエルボク
 

鼓動には0・5秒程度の誤差があるように思えた、真夜中のキッチンでシンクの側に腰を掛けて水を飲んでいた、現実感はあまりなかった、と、普通は書くのかもしれないが、それがその日の中では一番の現実として成り立っていた、俺にとって現実とは目に見える世界のことでは無いのだ、あくまでも肉体への反動があるかないか、それだけが俺にとっての現実なのだ、俺は喉を通って腹の底まで落ちていく水の感触を確かめていた、身体が渇いているとそういったことを感じ取るのは容易い、最後に水を飲んだのかいつだったか思い出せなかった、もしかしたらまだ日があるうちだったかもしれない、今日夕飯を取っただろうか?取っているならその時に水分も補
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