数式の庭。原型その2/田中宏輔
無限という言葉も書いていなかった。
たしかに、ゼロという数は
詩人のあのメモにあるフェイズとアスペクトからは
出てくるものではなかっただろう。
しかし、無限は?
そうだ。
たしか、詩人は、こんなことを言っていた。
「無限は数ではなくて
状態だからね。
無限にあるような気がしても
無数にあるような気がしても
無限や無数といったものはないからね。
概念としては定義できても
定義されたものが必ずしも存在するわけではないからね。」
詩人は、無限を数としては認めていなかったようである。
ゼロという数も嫌っていた節がある。
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