数式の庭。原型その2/田中宏輔
ぼくのこころは、きみが口にした雲という言葉で思い出される
さまざまな記憶にもアクセスして
目で見ている雲以外の雲も
こころの目に思い浮かべるだろうね。
ことに、きみといっしょにいた
さまざまな思い出とともにね。
そして
もっと、おもしろいのはね。
もしも、きみが、雲と言って指し示したところに
雲がない場合ね。
それでも、ぼくは
そこに、雲を見るだろうね。
なにが、ぼくに雲を見させるんだろう。
きみが口にした、雲という言葉かい?
おそらく、そうだろう。
きみが口にしなければ、ぼくのこころの目に
雲
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