数式の庭。原型その2/田中宏輔
雲の姿かたちなど、微塵も思い浮かばなかっただろうからね。
でも、もしも、ぼくがいなければ、どうだったんだろう。
きみが、雲という言葉を、ぼくに言わなかったら?
ぼくのこころの目に浮かんだ雲の姿かたちは
きっと現われることなどなかったろうね。
言葉が、ちゃんと機能した言葉であるためには
その言葉を理解できる受け手が存在しなければならないってことだね。
言葉がちゃんと機能するっていうのは
その言葉が指示する対象が存在するかどうかではなくて
その言葉の受け手が
その言葉が指示するものがなにであるかを
きちんと認識できているかどうかにかか
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