数式の庭。原型その2/田中宏輔
 

自分の作品を何度も読み返しているうちに
その言葉が想起させるイメージが
これはヴィジョンだけではなく、
そのときのニュアンスとかいったものも含めて
詩人が想起させたときに
「正しい記憶」のほうが
「それはまちがっているぞ」というシグナルでも発していたのであろう。
詩人は、そのシグナルにはじめは気がつかなかったが
何度も読み返しているうちに気がついたのであろう。
詩人は、「文脈の齟齬」と書いていたが
「正しい記憶」による「心情の齟齬」とでもいったものが
詩人のこころのなかに生じたのではないだろうか。
「正しい記憶」が「誤った記憶」を正す機会は
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