数式の庭。原型その2/田中宏輔
関わっているということなのだ。
記憶は正しい。
正しいから正せたのだから。
記憶を抽出する段階で
事実をゆがめたのだ。
音調。
これは、ぼくにとって呼吸のようなもので
ふだんから、音楽のようにしゃべり
音楽のように書く癖があるので
思考も音楽に支配されている部分が大いにある。
まあそれが、ぼくに詩を書かせる駆動力になっているのだろうけれど。
大部分かもしれない。
音調。
それは、ほとんどつねに、たしかに恩寵をもたらせるのではあるのだが
恩寵とは呼べないものをもたらすこともあるのだった。
青年が発したのは、まさに言葉であって、ものではな
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