数式の庭。原型その2/田中宏輔
、それが語をあらしめたのではないか、少なくともそういったケースがあるのではないかと思われるのであるが、どうであろうか。もちろん、新しい事物や事象に、新しい言葉を与える場合があるのだが、このような場合の欲求のことではない。いや、こういった欲求も含めていいのだが、形式が実体を求めるようなもの、そうだ、俳句や短歌がよい例だ。形式が言葉を求める、実体験あるいは実体験への観想を求めるように、語法的なものが語を求めるというようなことがあるように思えるのである。
たとえば、さいしょのものの比喩としたら、数をビーカーに入れて、長い時間、温めながら撹拌しつづけると、記号が滲み出してきて、やがて数と数が記号によ
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