コバルトのヒツジの瞳/あらい
 
て芸がないが、悪気もない。
 人生/と或る/ならば。
 どことなく求め分解された大群が少し、口を噤んだは、ね(刎)。願いごと、かつてあった雨が芽生えて、掌に降り注ぎ、呼吸の裏返しでは、未完成の精霊が傾いた 濃い紅茶にしぶしぶ道を譲る。

 見上げると私たちはただ、まるで生き物のように動いているひかりで、それはただの布切れであり必要とされないトランプが、香ばしいスパイスが斜めに差し込み、弦を擦ったスプーンと弾ける、赤いインクのボールペンがトライアングルエコーのように 口に運ばれ、舌がまぶたを叩く。きまぐれに向かう指針を 唾液の泥のような夜空を背負った。唸り声を曇らせながら。微笑むように
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