ずっと好きでいられますよう/由比良 倖
 
全体を相手にしていて、それでも常識には勝てないというジレンマに悩んでいて、悲しいときには悲しいと書いて、嬉しいときには嬉しいだけでいいんだけど、でもそれだけでは足りなくて、やっぱりひどく愛に飢えている。

 ニール・ヤングがジョン・レノンについて「彼は真実しか歌わなかった」と言っているけれど、中也も同じだと思う。

 ……それに比べると、僕はもう生活に負けていて、生活の中で少し得するような、人に媚びた言葉だけを、つまり嘘だけを並べている、堕落した人間だ。どうしようもなく世間的な不安に引きずられている。
 そして中也の詩を読むたびに、もう中也の詩だけあればいいじゃないか、僕なんていなくても
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