数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
うに見えるのだが
空に浮かんだ雲のように変形し展開しつづけるために
その形をとどめることは、けっしてない。
その姿を目にした場所に目を凝らすと
なにも見えなくなり
見えないところに目をやると
見えてくる。
この素粒子の大きさの数式の花は
変形し展開する時間そのものを見せる
変形し展開する場所そのものを見せる
変形し展開する出来事そのものを見せることはない


*


たとえばゼロで除するといった禁則がある。
禁則を一つ犯すことで数式の花は咲かなくなる。
ところが、いま目にしている花壇の数式の花たちは
禁則を破らせたまま開花させたもの
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