数式の庭。原型その1/田中宏輔
な時間は
数秒といったところだったであろうが
意識的な時間経過感覚と
物理的な時間経過に要した時間とのずれはあるだろうから
正確には
どれだけの時間が経っていたかはわからない。
生徒の態度のほうに異変がなかったので
それほど時間は経っていなかったであろう。
授業中
何度か窓の外を見たが
もうひとりのわたしの姿は消えていた。
わたしには
さいしょから
校門のほうにいるわたしを見ることができなかったであろう。
そもそも教室からは
位置的に見えない場所であったからである。
*
水盤に浮かべた
ふたつの数式の花を眺めてい
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