数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
こる
いっさいのことの限界は
世界とわたしの限界である、と。


*


限られた個数の数と記号であるが
無限に組み合わせることができるのだ。
限られた語彙で無限に異なるニュアンスで考えることができるように。
しかし、無限は、すべてではない。
すべての数式の花が
わたしの数式の庭に咲くわけにはいかない。
わたしがけっして知ることのない数式の花の数が
いったい、どれだけあるのか
それすらもわからないのだけれど
きっと、わたしが知ることのできる数は
それよりも、ずっとずっとすくないのだろうと思う。
生きている限り
考えることができる状
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