数式の庭。原型その1/田中宏輔
 

通常空間にあって
なにものもさえぎるものもなく
屈折させるような媒体もない場合の話だが。


*


一夜をおいて
考えていたのだが
欲を出したというのか
さまざまな間違いをしてしまったらしい。
ぼくの外にあって
けっしてぼくとはならないもの
けっしてぼくとはつながらないもの
それはまた
時間ではないもの
場所でもない
出来事でもない
そういったものは
ぼくの数式にも
ぼくの思考にも
いっさいの影響を与えてはならないのだった。
そういったものを
ぼくは存在していると確信しなければならなかったのだ。
きの
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