数式の庭。原型その1/田中宏輔
ない。
*
いくつかの数を葬って
いくつかの記号を葬って
わたしの足音が遠ざかってゆく。
*
葬られた数式が
しだいに分解していく。
分解された数式は
おびただしい数の数や
記号といったものの亡骸は
わたしそっくりの
亡霊となって
わたしのいない
数式の庭を眺めている。
*
目で見え、目そのものとなるもの
耳に聞こえ、耳そのものとなるもの
手で触れ、指や手の甲そのものとなるもの
舌で味わえ、舌そのものとなるもの
こころに訴え、こころそのものとなるもの
思考を促し、思考そのも
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