数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
か問題集と取り組んでいたのだろう。
ノートにせわしくペンを走らせていた。
そのうち、つぎつぎと
さまざまな齢のわたしの姿が
庭を取り囲んでいった。
数も数えられなくなった。
わたしはいつの年のわたしなのかと
ふと思った。
無数のわたしのなかの
ひとりのわたしであるのだろうけれど。
そうか。
数式の庭もまた
さまざまなわたしを眺めていたのだと
わたしは気がついた。
さまざまなときに咲く
さまざまに咲くわたしを。


*


数字や記号が
ばらばらと落ちる。
土は手をのばして
それらの数字や記号を
土のなかに引き
[次のページ]
戻る   Point(13)