数式の庭。原型その1/田中宏輔
*
見る見るうちに
いましも、しぼみ
しおれていくところだった。
この数式の花は死んで
ほかの数式の花を咲かせる。
そのためにこそ
この数式の花はある。
だからこそ
この数式の花は
何度も死ななければならない。
他の数式の花を何度も咲かせるために。
*
庭に出て
花たちを眺めていると
花たちの顔が
わたしの隣を見ているような気がしたので
横を見ると
十年ほどもむかしのわたしだろうか。
深刻な表情をして花のほうを見ていた。
その奥にあるわたしの部屋では
高校生ぐらいのわたしだろうか。
受験参考書か問
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