数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
状態になろうとするのだ。
もっていないと、もちたくなるように
もっていると、もっていたくなくなるように。
あったことは、なかったことのように思いたくなり
なかったことは、あったことのように思いたいように。
タレスやヘラクレイトスやエンペドクレスといった哲学者たちの言葉が思い出された。
いや、彼らの言葉が、いままた、わたしを、ふたたび見出したのだった。


*


花の下に
小さなわたしがいた。
うつぶせになって倒れていた。
腰をかがめて
そっと手で揺さぶろうとすると
指が触れるか触れないかの瞬間に
小さなわたしの姿が消えた。
立ちあ
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