数式の庭。原型その1/田中宏輔
 
どめ
その存在にこころを配ることにしよう。
わたしにかかわった人たちや物事に、できうる限りこころとどめられるように
その人に、その存在に、こころ配ろう。
それが、わたしにできることの最良のこと、最善のことのように思われる。
いま、ふと、リルケの言葉が思い出された。
「こころよ、おまえは、なにを嘆こうというのか?」
違った。
「こころよ、おまえは、だれに嘆こうというのか?」
いや、前のだったかな。
定かではなくなってしまった。
しかし、最初に思い浮かべた
「こころよ、おまえは、なにを嘆こうというのか?」
この言葉を思い出して、この断章を終えようと思
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