数式の庭。原型その1/田中宏輔
をもつことなどないということである。
なんと、人間は孤独な存在なのだろう。
いや、人間だけではない。
動物も植物も昆虫も鳥も魚も、それに生物ではない物たちも、
物ですらない風景といったものでさえ
なんと、孤独な存在なのだろう。
空に浮かぶ雲も
雨のつぎの日に道にできた水たまりも
夜空を彩る星たちの配置も
テーブルに置かれたコーヒーカップの音も
そのコーヒーから漂う芳香も
わたしたちの頭に思い浮かぶ事柄も
辞書のなかに存在する言葉も
あらゆる事物・事象が、概念すらもが、ただひとつのものも
孤独ではないものなど存在しないということである。
存
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