数式の庭。原型その1/田中宏輔
だった。
数式の庭に立って
変形し展開していく
数式の花を眺めていると
これもまた不思議なことに
わたしには
その音が聞こえてくるのであった。
湖面で蒸発する光の音が
おそらくは
わたしだけに聞こえるものだったように
もしかすると
この花たちの立てる音も
わたしの耳にだけ聞こえるものかもしれないが
いや
きっと耳をすませば
湖面で蒸発する光の音も
数式の花が立てる音も
だれの耳にでも聞こえるものだと思う。
数式の花が立てる音は
花ごとに微妙に異なるのだが。
*
しかし
なにかほかのことに
ここ
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