数式の庭。─前篇─/田中宏輔
 

「数式の花」でもなく
「あなた」でもない
わたしとあなたに。
二度と同じものではない
わたしとあなたに。

 *

あなたが忘我となるとき
わたしは歓喜の極みとなる。
わたしもまた、わたしが数式であることを忘れる。
そのとき、あなたは喜びの極致に至る。
忘我とは、我であり、我ではないもの。
歓喜の極みとは、もはや歓喜ではない。
喜びの極致とは、もはや喜びではない。
存在そのものなのだ。
わたしとあなたの忘我と歓喜が
存在を存在ならしめるのだ。
そのためにわたしはいる。
そのためにあなたはいる。

 *

庭に出て

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