数式の庭。─前篇─/田中宏輔
算記号を置くべきところに
べつの演算記号を置いてしまったのだ。
すると
その数式の花は
みるみるうちにしぼんでしまって
ばらばらの数字と記号の塊になってしまったのだった。
しかし
見ていると
その数字と記号のひと塊のものが光り輝き
見事に美しいひとつの数式の花となったのだった。
わたしは、自分が間違えて
ある演算記号の代わりに
べつの演算記号を置いたのか
振り返って
思い返さなければならなかった。
*
庭を見下ろした。
すべての花が枯れ果てて
数と記号が庭じゅうに散らばっていた。
いま、わたしのこころも、打ちひしがれてい
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