数式の庭。─前篇─/田中宏輔
 
ているのだ。
わたしのこころの状態が
この数式の庭に呼応しているのだろうか
あるいは、逆に
わたしのこころの状態に
この数式の庭が呼応しているのだろうか。
そういえば
数多くのこころの日々
この庭にある
さまざまな数式の花が
わたしの目を喜ばせ
わたしのこころを喜ばせてくれたものだった。
わたしは庭に降り立ち
そこらじゅうに散らばった数と記号を手に集めて
じっくりと眺めていた。
雲が去り
庭に日が射した。
ふと思った。
いま、わたしのこころを痛めつけている事柄についても
いつかは時が過ぎ
わたしのこころの状態が変わると
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