影か揚羽か/ただのみきや
 
かつて太陽目がけて投げ上げられた一振りの剣が
この日祭りでにぎわう往来の真中へ落ちて来た
剣がひとりの人を貫いて固い地面に垂直に突き刺さると
群衆は一瞬凍り付き すぐにその場から逃げ出そうとしたが
叫びやどよめきを聞きつけ集まって来た野次馬と相まって
濃密な人の渦を生み出すこととなった
血だまりを中心に半径6メートルほどの不可侵の円が形成され
最前列に立とうとする人々と円内へ飛び出さないよう踏みとどまる人々
そんなおしくらまんじゅうで円内はひとつ祭儀空間へと文脈を変容させていった

人々の服装は祭りのせいかいつにもまして色とりどりで
空から見るとたった今一輪の赤い花が万国旗で
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