影か揚羽か/ただのみきや
 
旗で飾られた広場の真中に
瑞々しく開いたかのよう
どこから迷い込んだか一羽のカラスアゲハが鋼の雌蕊に止まると
黒鍵を花びらのように散らす疑問符という音符が群衆の耳たぶに寄生して
重さを欠いたまま垂れ下がり心地よく
脳をゆらしていることに気づく者は誰もいなかった
太陽はその血液である光を祝祭にふさわしく大判振る舞いした
人々がかざしたりまさぐったりする手中の小箱の照り返しを
自分を崇めるための供物であると錯覚しますます機嫌を良くしては
金色の血液を地が焦げつくほど注ぎまき散らすものだから群衆は目もつぶれんばかり
足下に開いた影の濃さ深さに気づかず                 
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