午後からの雨/山人
 
れないと思っていたのだが、なんとか三時に終わった。
 標高一五〇〇超の目的地はヌマガヤに覆われ、その間隙にイワショウブとリンドウが開花していた。初秋に花をつける植物だが、以降山には花らしい花は無くなる。
 午後三時ともなれば登山者は皆無だ。ドライフルーツと水を軽く胃に流し込み、刃のメンテナンスを入念に行った。メンテナンスが終わる頃、エンジンは程よく冷め、覆いをして山を後にした。
 最近、下りは言葉を発しなくなった。以前は何かと独り言を言いながら下山するのだが、最近は寡黙になった。たぶんそれは、独り言を言ってもなんの得にもならないということが痛いほどわかってきたのであろうか。どれだけ自分を正当
[次のページ]
戻る   Point(5)