僕の「I was born」/九十九空間
 
キッチンには、朝陽が斜めに入る
僕は眩しくない身体の角度を保って
毎朝、玉子焼きを作る
お母さんは玉子焼きが大好きだから

鶏の無精卵を割るたび
命じゃなくて良かったと思う
有精卵なんて
恐ろしくてきっと割れないだろう

僕は不登校だけど楽しく生活しています
家事もだいたいできるようになりました
けれど、ときどき、とても、
とても――死にたくなります
             死にたくなるのです、

吉野弘の「I was born」を読んで
「生んでくれって頼んでないのに」と
お母さんに言ったとき
いま、お母さんに
ナイフ突きつけているんだと思った


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