暗号ver2/パンジーの切先(ハツ)
こうえんの隅に描かれていた、
てんしの横顔を見て、
「祈りという文字は、ずきずきするから、いのり、へとひらかれていく、」
と、書きつけたくて、あたしがノートをひらくとき、
回転扉のむこうでは、
こいびとが、
あたしのいのりは届かなかった、というジェスチャーをなん度も繰り返している、
(※両手のゆびさきだけを合わせて、とても速く動かしてから、そのあいだに膜を作ることは、いのりが宛先不明であったことを示す。)
白詰草とクローバーのかんけいとおなじように、
あたしたち、もつれあって泳ぐ脊椎動物どうしだったのに、
どうしてあなた、回転扉の向こうなんかにいるの、
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