路地に滲む夢/ホロウ・シカエルボク
 
を見ながらそんなことを考えた、通りの終わりには地蔵がひとつ置かれていた、そばに小さな碑もあったけれどそこになにが書かれているのかはもうわからなかった、辺りが暗過ぎたし、年月が経ち過ぎていた、4、5人の気配がしたけれど見渡してみてもひとりも見当たらなかった、この場所で何が起こったのか、知りたい気持ちが無くはなかったが、同時にそれは知ってはならないことのような気がした、俺はどんなことにも気が付いていない振りをしてそこを通り過ぎた、駅を探して電車に乗ろうか、少し長いけれど歩いて帰ろうかと悩んだ、今日はもう歩きたい気分じゃなかった、と言って、ホームで電車を待つ気にもならなかった、タクシーを捕まえて、家の近
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