路地に滲む夢/ホロウ・シカエルボク
 
の近くの大きなスーパーの名前を言った、運転手は声を発することなく頷いて完璧な運転で俺をそこまで運んだ、俺は金を払い、とても快適だったと感想を言った、初老の運転手はほんの少しだけ笑って頭を下げた、俺が車を降りると、タクシーは静かに滑り出したが、そのまま次第にスピードを上げて壁に激突した、壁は崩れ、タクシーのフロントを圧し潰し、タクシーは三度弾んで沈黙した、辺りからわらわらと人が現れてタクシーを取り囲んだ、駄目だ、死んでる、と運転席を覗き込んだ誰かが言った、俺はそのままスーパーに立ち寄り、買う必要もあまりないものを幾つか買って家に帰った、シャワーを浴びて、音楽を流しながらソファーにもたれた、いつの間にか転寝していた―特別なにが起こるでもない、けれどなにかとんでもなく不吉なものを含んでいるみたいな、寝覚めの悪い夢を見た。


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