路地に滲む夢/ホロウ・シカエルボク
竜が進化したものだっていうのがあったけどさ、いまや人間は蠅に退化していってるんじゃないかと思うよ、単純明快なものばかり追いかけて、すべてをその枠にはめようとする、ドストエフスキーを「文字が多い」と批判することがスノッブだと思ってるようなやつらばかりさ、履歴書ぐらいしか書いたことがないようなやつらがなんだってわかるみたいな口を聞いてる、まったく、反吐が出る―路地を出て、小さな食堂で早めの夕食を取ることにする、厨房に一人、ホールに一人の、中年の夫婦らしき二人だけの店、ウエイトレスの女は人生にどんな望みも持っていないような、真っ黒に塗り潰された目をしていた、厨房の気が短そうな痩せぎすの男は性急なペースで
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