それでも私は山に向かう/山人
業していた。11時15分になり、昼上がりするために15分ほど山を登り、車に着いた。堰道の薄暗いところにマットを敷き、豚の餌のような弁当を広げ食べ始めた。私は弁当はすべて自分で詰めるのだが、自分の胃に関しては、身体の中に入ればすべて一緒という発想しかなく、茗荷の油味噌に麻婆茄子といった、それそのものが形状をなしていない、粘質のおかずを詰め込んだだけの弁当であった。暑さで食欲は無く、おかずと少しの飯粒を無理やり胃に流し込んだ。他におやつとして水羊羹と柿の種ミックスを持参していたのだが、それがすこぶる美味かった。
マットの上で寝そべり目を瞑っていると、薮蚊が盛んに耳元で不快な羽音を立てている。痛みが
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