別鏡/ただのみきや
 
麒麟の影で琥珀を拾う
差し出す耳に
甘く崩れ
世界は暗転した

蝉の声を運ぶ蟻の群れ
記号になりかけの蜻蛉(とんぼ)の群れ


懐中時計を開ける度
動き出す舞台
ことばを纏って輪廻を繰り返すものよ


燕(つばめ)は掌には住めず
少女は溶けて逃げ水となった

触れる前に滅ぶ
こころは一陣の風
実体もなく


死の隠語のパレードから
38万4400キロメートル離れ
白い背に 
顔を埋め

額づく耳に
水のささやき

張られたイト
縫い留めるイト 
ふるえるイト
唇と唇が遠く離れて咥えるイト
漲るイト イト イト


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