沈没船の内訳は君のように俺のように/ホロウ・シカエルボク
 
なのかというようなことは結局分からないままだった、ラジオはお行儀がいいだけのヒットチャートを流していた、全身で歌をうたうシンガーが居なくなった、音符に沿って声が出ているだけの電子ピアノみたいな声のやつらばかり、昔はよかったなんて話をするつもりもないけれど―コンロに乗せた小さな薬缶が発狂する、火を止めてインスタントコーヒーを入れる、こういうものがあると欲求に関係なく、時間の隙間を埋めるみたいに飲んでしまう、それはもしかしたら中毒なのかもしれない、だけど、中毒なんて言えるほどの切迫感は微塵も存在していない、そういうことなのかもしれない、日常とは異常事態にすっぽりと被せられるフィルターみたいなもので、あ
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