初秋/山人
た隣人にたまたま発見されて命を取り留めたという経緯があった。あんな偶然はあり得ないとすら思えたが、あったのだ。
六十六年間を振り返れば、不運がかなりの率を締めているが、このように命を救われたり、大怪我を免れたりといった事例も多いと気づく。もちろん知人などは、常に順風満帆で不運というものが存在しないのではあるまいかといった類の人も多い。
春以降、妻とは寝室を共にすることもなく私は仕事場で寝泊まりし、朝食のみを食べに家に行き、あとは冷凍飯や家から持ち出した総菜、仕事場の冷蔵庫からがさっと簡素に作った総菜などで自炊している。かといって夫婦仲が悪いのかと言えばそうでもなく、意外と二人で出かけること
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