空を買いに/由比良 倖
は彼のファンだ。
ヨンシーだけあって、結構な値段が付いていた。
「こんにちは、ヨンシーさん。でも僕はあなたを買えない。このお店は、良品ずくめですけれど、僕のような貧乏人が来る店でも無かったと思うんです。お邪魔ではないでしょうか?」
ヨンシーはにこにこ笑って、
「歌だけならお安く出来ますし、実のところ、あんまりたくさん売れちゃうと、お店がすかすかになって困ります。大抵売れるのは、結局気に入った石ころをひとつ買って帰るお客さまがいたり、思い出を買って帰ったりで、それで十分なんです。もちろん、お好きなだけ見て回るだけでもいいですよ」
「思い出が欲しいです。売り場はどこですか?」
ヨンシ
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