由比寺の刀/atsuchan69
 
がて彼は、おゆいを妻よりもふかく愛した。

「景時さま。あなたの強さはどこにあるのか、どうぞ聞かせてください」

 毎夜、おゆいがその言葉をもって彼に迫り促したので、景時の魂は苦しんだ。 やがてある夜、ついに彼はその答えを明らかにした。

「余の力は、渡来の民が天から墜ちた鉄を溶かし叩き、陰陽師の祈りと雪解けの水によって冷やし固めたこの妖しい刀にある。刀を研いだのは婆羅門の宗徒じゃ。もし剣を奪われたなら、余の力は忽ち去って失われるであろう」

 夜の闇が訪れ、景時の眠りが深まる中、おゆいは刀を奪い、義久の元へと走った。影時は目覚めると、すぐにも刀と力の喪失に打ちひしがれるのだった
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