由比寺の刀/atsuchan69
 
った。しかし怒りと絶望の中で彼は反撃の火を灯した。戦いの火蓋が切られ、景時の軍勢が暴風のごとく広がるも、神剣なき力は次第に衰え、やがて敗北の影が濃く忍び寄った。義久は景時を捕えて、ふたつの眼をえぐり、鉄の足かせをかけて牢獄につないだ。こうして景時は、ただ死を待つばかりとなった。

 戦いが終息を迎えたとき、卑怯を悔いておゆいは泣いた。ある夜、揺らぎ瞬く提灯を手にした従者とともに牢獄へ赴くと、おゆいは景時に刀を手渡した。

「義久へ渡した刀は偽物です。景時さまの刀は、私が大切に隠し持っておりました」

 裏切りの罪を悔いながらも、その声は景時の耳には空虚な物音でしかなかった。ただ景時は
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