由比寺の刀/atsuchan69
 

「わが刀をもって死体の山また山を築き、雷のような光と轟きをもって千人を打ち殺した」

 やがて紫の夜着を羽織った義久の側に臥し、おゆいの瞳には暗い企みが宿った。

 真夜中、おゆいは義久の寝室を離れると、じっと睡蓮の葉の浮かぶ池を睨んだ。まるで遊女が着るような朱色の袿(うちき)に垂れた、おゆいの長い髪が夜風にそよいでいた。

 景時の力の秘密を探るため、おゆいは美しい側室として彼に近づいた。いつどんな時も彼女の微笑みは、仮面のように胸のうちの奸譎を隠していた。

 おゆいは手厚く景時に接し、その仕草は氷を溶かす春の陽だまりのように穏やかだった。景時の心はゆっくりと溶かされ、やがて
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