由比寺の刀/atsuchan69
時はその力を振り絞り、藤蔓で巻いた柄をつよく握りしめると、妖しく反った刃をさも虚空を斬るかのように抜いた。すると一瞬のうちに足かせの鎖を断ち、太い角材で組んだ牢の格子を斬り裂いた。牢獄を出ると大勢の者たちが襲ってきたが、視力のない景時は音と気配で敵の肉と骨を斬った。たった一人で、三十人を殺し、城の本丸へ入るとさらに七十人を殺した。女の匂いのする静まった城の奥まで進むと、弓を持った赤い鎧姿の従者と、純白の寝具に座る義久がいた。
「暗闇侍め、この矢を受けてみよ」
そう言い終わるのと同時に、四本、そしてまた三本、また二本の矢が影時の胸と首に突き刺さった。景時はそのまま立ち尽くし、えぐり取
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