Sweet Thing。/田中宏輔
は、相変わらずきれいに刈りそろえられた金髪だったけれど、そこには、たしかに、十円硬貨よりすこし大きめの大きさの円形のハゲができていた。「おれが勤めてた風俗店がつぶれてしもうてん。それでいま仕事してなくて、ストレスになってんねん。」彼が着ている服は、別に安物ではなさそうだったけれど、言葉というものは不思議なもので、そんな言葉を聞くと、彼が着ていた服が、急に安物に見えはじめたのだ。坐っているのが彼だとわかったときには、ぼくは腰を落ち着けて、彼といろいろしゃべろうかなと思ったのだけれど、彼の話を聞いて、仕事をしていないという状況にある彼に、万一、たかられでもしたら嫌だなと思って、彼の太ももの上に置いてい
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