Ommadawn。/田中宏輔
いるのが見えた。ロシアの船らしかった。たしかに日本の「蟹工船」に対する監視船だった。
ここでまた、比較のために、『或阿呆の一生』の言葉を、前掲の三つの文章のなかにある言葉と置き換えてみた。
それは或本屋である。二階はまだ無い。
どこで生れたかとんと見(けん)当(とう)がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所で二十歳泣いていた事だけは記憶している。彼はここで始めて書棚というものを見た。しかもあとで聞くとそれは西洋風という梯子(はしご)中で一番(獰=どう)悪(あく)な本であったそうだ。このモオパスサンというのは時々ボオドレエルを捕(つかま)えて
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