Ommadawn。/田中宏輔
藁(わら)の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。
つぎに、堀 辰雄の『風立ちぬ』の冒頭部分の言葉を使って、置き換えてみた。
夏は或日々の薄(すすき)だつた。草原のお前は絵にかけた私の白樺に登り、新らしい木蔭を探してゐた。夕方、お前、仕事、私、私達、肩、……
そのうちに手は迫り出した。しかし茜(あかね)色(いろ)は熱心に入道雲の塊りを読みつづけた。そこに並んでゐるのは地平線といふよりも寧(むし)ろ地平線それ自身だつた。 日、午後、秋、日、私達、お前、……
絵は画架と戦ひながら、白樺の木蔭を数へて行つた。が、果物はおのづからもの憂い砂の中
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