Cut The Cake。/田中宏輔
 
の背中に薔薇という文字を書いていったわたしの指先と絡みつき、シャワーの滴り落ちる音は、ラブホテルに入る前に彼らが見上げた星々の光となって、スクリーンの上から降りてくる。そして、ノブユキの握り返してきた手のぬくもりが満面の笑みをたたえて、わたしというガラスでできたテーブルを抱擁するのである。さまざまなものがさまざまなものになり、さまざまなものを見つめ、さまざまなものに抱擁されるのである。それは、あらゆるものと、別のあらゆるものとの間に愛があるからであり、やがて、愛は愛を呼び、愛は愛に満ちあふれて、「スラックスの前から勃起したものがのぞいている。」(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『ヒューストン、ヒ
[次のページ]
戻る   Point(6)