詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
いだ。去年の塵みの記憶はなにもかも波が浚い尽くして、この星はまた一から出直すつもりなのだろうか。だとしたら、このわたしも一から出直せばいい。そう、おもった。
北のトイレ掃除を終えたあと、火バサミと黄色いゴミ袋を持って、わたしひとりがビーチをあるく。上田さんと中川さんは駐車場の塵みを拾いあつめているはず。北西の季節風に背を押されて南に向かってあるく。日差しはあったかくても風を受ける頬はつめたい。マスクはしない。見渡す限りだれもいない。どこまでも、砂と汐。ひともウイルスもいない。だからどこまでもあるいて行けるはずなのに、塵みのないビーチはあるけなくてつい立ち止まってしまう。それはあるくための目標が
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