詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
標がないということなのだ。
ひとのしくみって、ずいぶん安上がりだ。歯車は多くてみっつ。はたらいて。食べて。寝る。そうしていつか、その歯車がすり減って動けなくなるのであれば、わたしはこのまま砂になりたいとおもう。砂になって海に帰りたいとおもう。
でも、ひとは砂にはなれない。いつか、どこかで分別されて燃え尽きて、骨になって、骨は雨水に溶けて草木の肥やしになる。ほんとうに後始末も安上がりなんだ。
文字通り家族となってわたしと生きた赤い雄犬も、白い雌犬も、ちいさな炉で焼いて骨は河口の橋の上から海に流した。それがわたしの理想だった。
骨になって海に帰りたい。
こうしてビーチに立って海を見
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